タイの労働法・社会保険・税務について
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タイの労働法
タイ現地の労働法に基づく労働時間、休日、休暇、時間外労働、休日労働、有給休暇、出産制度、解雇、解雇手当についてご説明いたします。
タイの週労働時間の特徴として、所定週労働時間が1日8時間、週48時間となっています。時間外労働割増率は150%と日本よりも高く、週36時間を超える時間外労働に関しては原則全面禁止されています。また祝日は日本より5日少ない13日となっております。深夜割増はありません。管理職に対し割増賃金の適応がないのは日本と同様です。
休日労働に関する運用には特徴があり、日本とは異なり休日にも1日8時間の所定労働時間という概念があります。この所定時間内の休日労働に対しては残業単価100%の支払いが必要になります。そして、8時間を超えた所定時間外の休日労働に関しては300%の支払いが必要です。
タイでは、1年以上の勤務で6日の有給休暇が付与され、それに加え病気休暇(有給)が年30日も別途付与されます。
有給休暇 | 1年以上勤務した場合に6日付与する。(以後毎年6日ずつ付与) | |
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1年に満たない場合 | 付与は不要(※実務的に2ヶ月ごとに1日を与えることが多い)。 | |
有給の繰り越し | 労働法上は繰り越し不要。 慣習的に2年・3年を目途に持ち越すことが多い。 |
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有給の買取 | 過年度分の有給は買取が必要です。 | |
疾病休暇 | 傷病時に年30日以内で有給休暇を取る権利が付与。 | |
出家休暇(法律ではない) | 取得回数や期間を予め定め、製造業などには導入している企業が多い。 | |
その他(法律ではない) | 「ビジネス休暇」「自己啓発休暇」「慶弔休暇」などを独自に定める企業もあります。 |
まず前提として、タイは日本とは異なり働き口が多く、タイ人が日本ほど会社に執着することはあまりありません。
タイでは解雇の際の金銭補償額が解雇の内容に応じて具体的に決まっています。また、解雇手当の支払いが不要であるケースが法律で具体的に明文化されています。ただし、合理性のない解雇が出来ないのは日本と同様です。また、合意退職の場合は、日本同様に解雇手当の支払いは不要です。
項目 | 詳細 | ||||||||||||||||
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解雇手当 |
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少なくとも1給与期間以上前に通知する必要あり。即時解雇の場合は、解雇手当の他に雇用報酬を支払う必要あり
① 特別解雇手当(事業所移転の場合):30日以上前の事前通告義務あり。新事業所で働くことを望まない労働者には特別解雇手当の支払いが必要。
② 解雇手当の上乗せ(整理解雇の場合):業務縮小、機械導入、機械更新等による労働者の削減を理由とした整理解雇は60日以上前に事前通告義務あり。また、6年以上勤続した労働者には、勤続1年あたり15日以上の解雇金を通常の解雇金に上乗せして支払いが必要。
労働者が「下記理由には該当しない」と解雇手当を求めて労働裁判所に提訴した場合、解雇事由に関する証拠が必要になります。タイの労働裁判では労働者側が優位であるため、労働者側に不正行為や規則違反などに対して(口頭だけではなく)警告書を作成し、証跡を予め揃えておくことが大切です。
No | 項目 | 備考 |
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1 | 契約期間満了の場合 | 契約期間は2年まで |
2 | 業務上の不正行為を行ったり、使用者に故意に犯罪行為を犯した場合 | |
3 | 意図的に使用者に対して損害を与えた場合 | |
4 | 過失により使用者に重大な損害を与えた場合 | |
5 | 就業規則、使用者の合法的、正当な命令に違反し、既に文書で警告を受けている場合 | 警告書の有効期限は違反を犯した日より1年 |
6 | 正当な理由がなく、3労働日連続して職務放棄した場合 | 3労働日間の休日の有無は不問 |
7 | 最終判決により禁固刑を受けた場合 | 過失、軽犯罪によるものを除く |
日本では下記の通り、産前42日、産後56日の休暇がありその間健康保険から出産手当金として給与の約2/3が支給されます。一方、タイでは90日間の産前産後休暇があり、そのうち45日間は有給扱い、残り45日間は政府による補助金が支給されます。また、育児休業はまだ制度化されていません。育児休業こそありませんが、共働きが前提の社会であり、育児による退職はあまりありません。
区分 | 日本 | タイ |
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産前休暇 | 42日 (給与の3分の2(66%)支給) |
産前産後合わせて98日 (45日間は有給) ※残りの45日分も社会保障基金により原則所得保障 |
産後休暇 | 56日 (給与の3分の2(66%)支給) |
(例)月収4万THB 通常90日 = 12万THB 産休 = 9万THB |
育児休業 | 産後57日目から子供が1歳になる日の前日まで (給与の50%支給 + 社会保険料の免除) |
制度なし (※タイは基本的に共働き社会であるため育児による退職は珍しく、休業制度もまだ存在しない) |