ミャンマーの労働法・社会保険・税務について
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ミャンマーの労働法
ミャンマー現地の労働法、雇用契約締結義務、労働紛争、試用期間、休日、休暇、時間外労働、休日労働、有給休暇、出産制度、解雇法制についてご説明いたします。
ミャンマーにおける労働時間等の概要は下記の通りです。
日本に比べて時間外労働の制限や割増賃金率の高さが特徴的です。
店舗及び商業施設法 | 工場法 | |
---|---|---|
対象者 | 1日8時間かつ1週48時間以内 | 1日8時間かつ1週44時間以内 ※但し技術的な理由で労働を継続しなければならない場合、週48時間まで認められる。 |
休憩時間 | 5時間以上で30分以上の休憩 | 5時間を超える前に30分以上の休憩の付与 |
拘束時間 (労働時間+休憩時間の合計) |
店舗・商業施設:11時間 公共娯楽施設:14時間 |
10時間を超えてはならない |
深夜労働 | 午後9時半まで (管理人、警備員を除く) 所定の銀行に勤務する者については深夜12時まで |
– |
時間外労働 | 年間で60時間を超えてはならない。 ※会社と労働者が合意し雇用契約書に記載することで年間60時間を超えて時間外労働を行うことができる。 |
– |
時間外手当・休日労働手当 | 平均賃金の200%以上 | – |
休日について、使用者は少なくとも週に1日は有給にて休みを認めなければならないとされています。
祝日について、政府の通知により規定された日を祝日とされており、年によって変動する祝日もあります。
休日又は祝日に出勤させた場合、平均賃金の2倍及び通常の生活費手当を支払わなければなりません。
ミャンマーの祝日は2016年時点で26日となっており全てが有給と定められています。
祝日名 | 日付 | 祝日名 | 日付 |
---|---|---|---|
独立記念日 | 1月4日 | メーデー | 5月1日 |
カレン新年 | 1月10日 | カソン満月 | 5月21日 |
連邦の日 | 2月12日 | 殉難者の日/ワソー満月 | 7月19日 |
農民の日 | 3月2日 | タディンジュ満月 | 10月16日 |
タバウン満月 | 3月23日 | タザウンモン満月 | 11月14日 |
国軍記念日 | 3月27日 | 国民の祝日 | 11月24日 |
ミャンマー年末休暇 | 4月11日 | クリスマス | 12月25日 |
水祭り | 4月12日〜16日 | カレン新年 | 12月29日 |
ミャンマー新年 | 4月17日 | イスラム祝日 | 現時点で未定 |
ミャンマー年始休暇 | 4月18日〜20日 | ヒンドゥー祝日 | 現時点で未定 |
ミャンマーでは、政府における常勤労働者、研修者、試用期間中の者を除き労働者の雇用開始後30日以内に労働者と雇用契約を締結しなければなりません。また雇用契約書には絶対的明示事項がありますので下表を参照ください。更に、雇用契約締結後、当該契約書の写しを管轄労働事務所に送付し、確認を得なければなりません。
【罰則】
雇用契約を締結しない場合罰則として6か月以下の懲役または罰金、若しくはその両方が科せられます。
絶対的記載事項 | 絶対的記載事項 | ||
---|---|---|---|
1 | 職種 | 12 | 仕事及び出張における車の手配 |
2 | 試用期間 | 13 | 労働者が遵守すべき規則 |
3 | 給与 | 14 | 研修参加後に継続して勤務しなければならない期間 |
4 | 勤務地 | 15 | 退職及び解雇 |
5 | 契約期間 | 16 | 期間満了時の対応 |
6 | 労働時間 | 17 | 契約において規定されている遵守すべき義務 |
7 | 休暇及び休日 | 18 | 合意退職 |
8 | 時間外労働 | 19 | その他 |
9 | 勤務中の食事の手配 | 20 | 契約書の規定の修正及び追記の方法 |
10 | 住宅施設 | 21 | 雑則 |
11 | 医療手当 |
【罰則】
絶対的明示事項を雇用契約書に記載していない場合は、3か月以下の懲役又は罰金若しくはその両方が科せられます。
なお、就業規則については日本と異なり就業規則の作成義務はありませんが、実務上多くの労働者を雇用する場合、策定している会社は多くなっています。
ミャンマーには試用期間の法的規制はありません。
しかし、試用期間中の賃金について最低賃金額よりも低い金額を設定する場合、3か月を超えてはならないとされていることに留意が必要です。
また実務上も3か月間の試用期間を設けることが一般的です。
有給休暇としては、下記の種類が挙げられます。
なお、有給休暇については労働者の勤続期間が12か月に満たない場合においても勤続期間に応じた割合の休暇を付与しなくてはなりません。
休暇の種類 | 内容 | 対象労働者 |
---|---|---|
有給休暇 | 休息、娯楽目的のために連続して最大10日間取得することができる。(15歳未満は14日) | 12か月間以上勤務し、かつ各月20日以上働いた労働者 |
臨時休暇 | 緊急の私的用事のため、1年間に6日間取得することができる。 ※但し、一度に取得できるのは最長3日間まで |
全労働者 |
医療休暇 | 療養のため、1年に最大30日間取得することができる。 ※勤続6か月未満の労働者は無給となる。 |
6か月以上勤務した労働者 |
なお、有給休暇については、未消化の有給休暇について、使用者との合意に基づいて、3年間を超えない範囲で累積有給休暇とできる制度もあります。
有給休暇の消化前に労働者の辞職、解雇又は死亡があった場合、使用者は、残存有給休暇について、その直前30日の平均日額給与の割合で給与を支払います。
ミャンマーの実務上、労働者は休暇を取得する前日または当日に取得するむね使用者に告げることが多いため、事前の届出義務について就業規則や雇用契約書に定めておくことが望ましいです。
ミャンマーの出産制度は日本と産前産後休暇の期間等や賃金が保障される仕組み等は同じですが、ミャンマー独自のものとしては配偶者出産休暇という制度があり、配偶者が出産した場合国からの給付のもと15日の休暇が取得可能という制度があります。
ミャンマー | 日本 | |
---|---|---|
産前産後休暇 | 産前6週間、産後8週間 | 産前42日、産後56日(多胎妊娠の場合は産前98日) |
産前産後休暇中の賃金 | 産休時に1年以上勤務しており、かつ6か月以上保険料負担を行っている労働者は平均賃金の70%を産休給付として受給可能。 また、出産時に出産が1児の場合は平均賃金50%(2児の場合は平均賃金の75%)を受給できる。 |
健康保険より給与の3分の2(66%)支給 |
配偶者出産休暇 | 配偶者が出産した場合、世話のため15日間の休暇を取得可能。 妻が社会保障加入者の場合は、平均賃金の70%を産休給付として受給でき、妻が非加入者の場合は半額受給可能。 |
– |
備考 | その他、家族支援保険制度として低所得者への子供への教育給付金、自然災害時の支援等が存在する。 | – |
ミャンマーにおいては女性の労働者が多いことから、人材確保の観点、また業務上の必要性から育休、産休制度を整える必要性は高くなっています。
ミャンマーでは契約期間満了前に契約を終了させた場合、労働・雇用・社会保障省の通知に基づき一定額の保障を行うことが法律上求められています。
勤続期間 | 解雇手当(給与月数) | 勤続期間 | 解雇手当(給与月数) | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 6か月以上1年未満 | 0.5か月分 | 6 | 6年以上8年未満 | 5か月分 |
2 | 1年以上2年未満 | 1か月分 | 7 | 8年以上10年未満 | 6か月分 |
3 | 2年以上3年未満 | 1.5か月分 | 8 | 10年以上20年未満 | 8か月分 |
4 | 3年以上4年未満 | 3か月分 | 9 | 20年以上25年未満 | 10か月分 |
5 | 4年以上6年未満 | 4か月分 | 10 | 25年以上 | 13か月分 |
ミャンマーにも労働関連の紛争解決制度があります。
使用者または労働者は苦情を調停機関に申し立てることができ、調停機関は受理した紛争事件を個別紛争と団体紛争に区分します。
個別紛争・・・使用者と労働者との間の紛争
団体紛争・・・使用者と労働組合との間の紛争