アメリカの労働法・社会保険・税務について
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アメリカに赴任させる社員の仕事内容、滞在期間等から判断して適切なビザを取得する必要があります。
アメリカに必要なビザの申請から取得の流れをご案内いたします。
アメリカのビザ
通常、米国に入国するためには、ビザ免除パイロットプログラム(下記参照)を適用するか、それぞれの目的にあったビザを取得する必要があります。アメリカの場合、ビザの申請は非常に複雑ですので従業員の米国派遣に当たっては、米国移民法に精通している専門の弁護士のアドバイスを踏まえて、(もしくは弁護士に代行してもらい)ビザの種類の選定と申請手続きを行うことをお勧めします。
日米間には「ビザ免除パイロットプログラム」(ビザ・ウェーバープログラム、以下「ビザウェーバー」という)が取り決められており、90日以内の観光やビジネス(細かく制限あり)のために米国に入国する日本人には、ビザ取得が免除されています。
※日本人が短期商用で渡米する場合は、B-1(短期商用)ビザの取得が免除され、日本人が短期観光で渡米する場合は、B-2(短期観光)ビザの取得が免除されます。
ビザ免除パイロットプログラムを適用できるビジネスは販売活動(一部除く)、修理技術者、会議、投機的事業など限定されており、販売事業の運営や製造、通常の販売活動等を行うことはできません。
2001年9月11日の同時多発テロ以降、米国の入国審査は厳しくなっており、入国審査官より滞在目的、期間を疑われると、入国を認められないこともあります。特に、ビザウェーバーで許可されている活動内容は厳密に限定されていますので、短期出張であっても注意が必要です。
ビザウェーバーで許可されている以外の活動に従事する場合や、90日以上の滞在を望む場合は、それぞれの目的ごとにビザを選択し、取得する必要があります。ビザの申請に際して、通常は母国の米国領事館や大使館で手続きを行います。この申請が許可されるとパスポートに写真入りのビザ(査証)が発給されます。
※ビザを所持しているからと言って、米国への入国が自動的に許可されるということはなく、入国審査官が何らかの理由で入国不適格と判断した場合は、入国を拒否される場合があります。一旦入国が許可されると、「ステータス」という合法的な滞在許可が与えられます。つまり、ビザは入国を申請する際に必要な書類であり、ステータスは、米国での滞在許可証となるのです。
◆ビザ取得の流れ
ビザ取得の流れには、基本的に以下の3つのケースがあります。
CASE1
事前に米国移民局にビザ申請する必要はなく、ビザを米国大使館・領事館で申請し、ビザが発給されたら、その後の米国入国時にステータスが認可されるケース(BビザやEビザ等が該当)
→最初に、在日米国大使館(領事館)でビザ申請手続きを行い、認可されるとパスポートに写真入りのビザ(査証)が発給されます。
CASE2
事前に米国移民局にビザ申請を行い、米国移民局から認可証明を取得した上で、大使館・領事館からビザの発給を受け、その後の米国入国時にステータスが認可されるケース(H-1Bビザ、 Lビザ、Fビザ等が該当)
→まず米国移民局にビザ申請をすることになります。申請が認められれば、米国移民局から、大使館や領事館でのビザ発給のために必要な認可証明が送られてきます。この認可証明を在日米国大使館(領事館)に提出すると、通常は写真入りのビザ(査証)が発給されます。
CASE3
すでに当事者が米国に滞在していて、米国移民局に直接ステータスの延長申請をするケース
→すでにステータスを所持している者が米国に滞在している場合は、米国移民局に直接ステータスの延長申請をし、認可証明を取得することにより、ビザを取得せずに、ステータスの延長をすることができます。
※ビザが切れていても、米国外に出国しない限り、ステータスの有効期限まで米国に滞在可能ですが、ステータスの延長後に米国外に出国して、米国に再入国する場合には、あらかじめ大使館や領事館で有効なビザを発給してもらう必要があります。
なお、米国移民局の審査が継続している最中に米国外に出国した場合、延長が認められるまで、米国への再入国ができなくなる場合がありますので注意が必要です。
◆ 就労ビザの種類
ビザウェーバーによる米国滞在は、滞在期間が短期間であり、かつ活動内容が制限されているため、実際に米国でビジネスをする場合ビザウェーバーでは米国で十分な活動に支障が発生するケースがあります。その際に必要となるのが、就労可能なビザです。ビザは入国目的により様々な種類に分類されています。数多くあるビザの中でも就労可能なビザは限られています。ビザは米国へ移民する目的で入国する人に与えられる「移民ビザ」と、米国へ一時滞在する人に与えられる「非移民ビザ」に分けられます。移民ビザは日本の企業から派遣する社員には通常使われませんので、ここでは非移民ビザの中でも駐在員用ビザ及び研修用ビザして使われることの多いビザを紹介します。
就労ビザ 種類 |
対象者 | ビザ有効期間 | ステータスの 有効期間 |
有効期間の 延長 |
最長滞在期間 ビザ取得 |
ビザ 取得期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
E-1 | 貿易、商業取引を行う企業等 | 通常5年 | 米国移民局からは最長2年 | 大使館・領事館からは5年ずつ、米国移民局からは2年ずつ | 無期限に延長可だが、ビジネスの実績が常に申請条件を満たす必要あり | 3~5ヶ月 |
E-2 | 米国への投資、経営・運営を行う企業等 | 通常5年 | 米国移民局からは最長2年 | 大使館・領事館からは5年ずつ、米国移民局からは2年ずつ | 無期限に延長可 | 3~5ヶ月 |
L-1A | 米国支社に駐在し、幹部職、管理職として働く人 | 通常3年 (企業設立1年目の場合は1年) |
最初3年、2年ずつ延長可。(設立1年目の企業は1年) | 2年ずつ | 2年ずつ、最長7年まで延長可。永住権の審査の結果待ちの間は延長可 | 2~6ヶ月 |
L-1B | 米国支社に駐在し、特殊知技術職として働く人 | 通常3年 (企業設立1年目の場合は1年) |
最初は3年、2年ずつ延長可。(設立1年目の企業は1年) | 2年ずつ | 2年ずつ最長5年まで延長可。永住権の申請をすると永住権審査の結果待ちの間は延長可 | 2~6ヶ月 |
B-1 | 短期商用 | 通常90日~10年 | 期日まで | 可能 | 制限無 | 1~2ヶ月 |
B-2 | 短期観光 | 通常90日~10年 | 期日まで | 可能 | 制限無 | 1~2ヶ月 |
H-1B | 学士以上かつ米国企業で大学の専攻と関連する専門職として働く人 | 通常3年 | 3年 | 3年ずつ | 最長6年まで延長可。 ※永住権の申請をすると永住権審査の結果待ちの間は延長可 |
2~5ヶ月 |
家族とは配偶者及び21歳未満かつ未婚の子供を指します。
本ページでは、日本からの赴任者がよく使用するEビザとLビザについてご紹介します。
Eビザには、日米間の貿易に基づく貿易駐在員ビザE-1ビザと、日本から米国に対する投資に基づく投資駐在員ビザE-2ビザがあります。
<Eビザ申請の注意点>
初めてEビザを申請する場合は、在日米国大使館または総領事館に在米企業の企業登録が必要になります。この場合、E-1ビザ申請なら継続的な相当量の日米貿易の存在の立証を、E-2ビザ申請なら実際に日本から投資が行われ、かつ、その資金が使用されていることの証明が必要となる点に注意が必要です。
E-2ビザ申請をする場合、資本金を投下するだけでは不十分です。E-2ビザ申請の投資とはリスクを伴った投資を指す為、単に銀行口座に資金を保有するだけでは認められず、ビザが下りる前から資本を投下し、それを資金源に事業を開始している証拠があればあるほど、リスクを伴った投資と判断されるのです。備品や機械の購入や従業員の雇用等の実績を積み上げていることが重要です。
< Eビザの取得方法>
Lビザは、企業内転勤者用ビザとも呼ばれます。米国に子会社を設立するほか、既存会社を買収して子会社化した際の日本からの駐在員の派遣に利用することができます。
① Lビザの申請要件
(1)赴任者が管理者であること、もしくは専門知識を有し、米国会社でそれらを要する職務に従事すること
(2)申請者は米国で勤務することになる企業の日本の親企業、子企業、関連企業で過去3年のうち少なくとも1年間勤務してきたこと。
(3)米国内の企業に採用してそこで職務に就くこと
(4)赴任者が米国で働いている間、米国内外において、派遣先・派遣元双方の企業が存続し続けること
また、Lビザは米国企業が新設会社(設立から1年未満の会社)か否かでビザの有効期間が異なりますので注意が必要です。
< Lビザ申請の注意点>
新設会社(設立から1年未満の会社)からLビザを申請するには、海外から駐在員を受け入れる準備が整っていることを示す必要があり、単に会社を書類上で設立するだけでなく、オフィススペースを確保し、実際に事業を始めることができる体制が整いつつあることが必要です。(現地社員の雇用が必ずしも必要というわけではありませんが、雇うことができればビザの取得はより有利になります。)
また、申請で重要なのは適切なビジネスプランを移民局に示し、いつの時点でどのようなことを達成する予定であるのかを説明することです。そして、ビジネスプラン達成のためにビザ申請の時点で既に実施した内容を証拠資料として提出できれば、プランの信憑性を増すことができます。
尚、新設会社のLビザの有効期間は1年に限られ、1年後には更新する必要があります。つまり、初回ビザを取得した時点で既に更新の準備が始まっていることを認識し、ビザ取得後できるだけ速やかに米国で事業を軌道に乗せることが重要となります。
< Lビザの取得方法>
※独立行政法人 日本貿易振興機構「駐在員のビザ取得ガイドブック」参照